ミロヴィ幼女

思っていないことを思う

天気の子感想(ネタバレ有り)

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・感想

 「天気の子」を観てきたので感想を書いていくわよ~ということでね。まずは思った通りの感想です。タイトルにも書きましたが、物語の本筋にもベタベタ触るのでまだ劇場に行っていない人は閲覧注意です。

 

 第一印象は「映像ヤバすぎだろ」でした。「君の名は。」でも同じことを思いましたし、正直予告映像の時点で想定はしてたんですけど、超えてきましたね。背景の作画が特に凄くて、雪降った時流れたニュース風映像の東京の夜景は実写使ってるんじゃないかと本気で思いました。というかあれは実写だったろ。雨粒の描写は「え!言の葉の庭じゃ~ん」となりましたね。雨粒がばちゃばちゃ跳ねてる作画って頭の中どうなってたら描けるんでしょうか、気になります。

 

 次に物語全体に対する印象です。個人的にはやや詰め込みすぎだったかなという感じです。「天気の子」はいろいろなことが起こりそうで、且つもう起こっていて……みたいな雰囲気が物語全体に漂っていたように感じました。それが良いか悪いかは意見が分かれるところなので賛否両論あったのは納得です。

 『新海誠シリーズ』的な観点で比較すると他の作品は序盤ふわっとして中盤終盤引き締めるか、序盤中盤翻弄して終盤ふわっとさせるようなテイストが多かったかと思いますが、今回は全体的にふわっとしてましたね。もっと具体的に言うと、この作品は群像劇としての舞台を整えた後に、それを特定の登場人物視点の物語として再構成したものという印象でした。他のオタクの天気の子評にもありましたが、「全貌が見えていないので想像の域を出ない部分があるが、おそらく概ね想像通りだろう」というのが端的な状況でしょう。

 じゃあそれを踏まえたうえで僕はどう思ったかという話になりますが、結構面白かったし好きだったなぁ(オタクスマイル)。

 やっぱり世界と好きな女の子どっちか選べって言われて女の子を選ぶ展開好きなんですよ、オタクくんはさ。最近は世界も女の子もどっちも救っちゃう主人公が人気な気がしますが、僕は何も犠牲にしない主人公より何かを犠牲にする主人公のほうが好きですね。しかも「あの子のことを分かってあげられてるのは俺だけ!」って叫びながら何もかもを振り切って走っていくシーンまで付いてますからね。ぶっちゃけ夢で3回くらい同じ展開辿ったことあります。ヒーロー願望役満

 

 続いて登場人物についてです。

 拳銃ぶっ放した主人公をヒロインがかまってあげたり、警察に追われる身なのにホテルでパーティしてたりと、主人公ズはかなり能天気な部分もありましたが、まぁその辺は年相応なのかもしれないなという感じです。それにほら、天気の子だしね。タイトル回収!

 この作品の登場人物全員お互いの中に自分の面影を少しずつ感じあって、それを補い合うように行動をしているが故の歪んだ出力はこれ以外にもいろいろありましたね。言葉で語られた情報量に対してキャラクターはしっかり立ってたと思いました。強キャラっぽいおばあちゃんも出てきたしね。

 

 というわけで、個人的には満足したというのが総評になります。ラストも東京沈没させたりと特に事態が解決したわけでもないみたいなのは流行の逆を行こうという気概が感じられて良かったと思います。好みでした。

 

・「君の名は。」との比較について

  正直物語の目指してる方向が全然違う気がするので「天気の子」と「君の名は。」を作品として比較する意味はそこまで無いんじゃないかなとは思いますが、大衆ウケするか否かみたいな話はしたいのでやっておきます。

 まず、「大衆ウケ」というのはどういう状態を指す言葉なのかということなんですが、僕は物語全体や登場人物の行動に一貫性があるかどうか、もっと言えば主人公サイドに大義があるかという部分が大きな判断材料になると考えます。つまり、小難しい話をあっちこっちで起こさないことや、主人公の行動や作品全体の態度が道徳観から外れ過ぎないみたいなところが重要だということになります。具体的には猟奇殺人者を主人公にして善良な市民をひたすら殺しまくって最後までお咎めなしみたいなお話は大衆ウケ狙えないよね的な。

 この視点で「天気の子」と「君の名は。」を比較すると、「天気の子」はある意味世界の敵がハッピーエンドする話ですから、如何に主人公サイドに感情移入して物語を主観的に捉えたかという部分で評価が真っ二つになりそうです。主人公サイドに感情移入するのが視聴者的には一番幸せなんですが、そこに彼らの無鉄砲さがストップをかけてきますよね。実際物語の本題的にもあまり主人公サイドに傾倒しすぎてもよくないといういじわるな構造になってるので選択を迫られます。

 対して「君の名は。」は元々が主観的な理解を要請する設定であった上に、その理解を妨害する事情が存在しないストーリー展開であったことが押すに押されぬ大ヒット作の貫禄を与える一因だったと思います。

 だから何?つまり、この違いを根拠として「君の名は。」>「天気の子」としてしまってよいのかということについてはオタクならば一考の余地があるはずです。まぁ「君の名は。」の方の完成度が狂っているので、一考した後同じ結論が出る可能性は十分ありますが。僕はどっちのタイプも必要だよねというスタンスです。当たり障りが無くてつまらないですね。

 比較ついでにもう一つ言っておくと、どちらの作品も自然、社会、個人という三つのレイヤーが登場して、個人にスポットが当てられているって構造は同じなんですよね。でも、それらの関係性を少しいじるだけで物語全体のイメージがガラッと変わるのは面白いなと思います。

 

・最後に

 実は今までの話は全部前座なんだけどねみたいな話を最後に付け加えさせてもらうと、「天気の子」の主役は空なんじゃないかなというのが所感なので、この作品について個人的に一番に論じたいのは人でも行動でも結果でもなく空模様なんですよね。つまり、空模様の変化こそが物語を動かすエンジンになっているというか、この作品の全ては天気に左右されてるというか。そこを言葉だけであれこれ評価しようとするのはあまりに果てしなくて億劫なので最後にちょろっと言うだけになっちゃいましたが。

 当日は朝に見に行ったんですけど見終わって映画館から出たら超晴れてて、さっき見た空だ!となってテンションが上がりましたね。これからは綺麗な空を見るたびに「天気の子」のことも思い出すでしょう。

 でもやっぱり「君の名は。」が大ヒットした直後にこんなふわふわさせた話をぶち込んでくるってことはこの路線は続けていくぞって宣言だと思うので謎の安心感を得たんですよね。「君の名は。」みたいな話は量産体制に入るとどんどんゴミになっていく傾向がある気がするので、メイン路線は「天気の子」タイプでこれからもどんどん掘り下げていってほしいなと思います。

 

 書き終わるの遅くなってすまんこ!書きたいことは最初からある程度決まってたんですけど、出来るだけ内容の重複が起こらない構成探しとハースストーンに手間取りました。

  書く場所なかったのでここに書きますが、僕は過去作の登場人物が最新作にちょこっと出てくるのは嫌いじゃないです。好きでもないですが。ただ、世界観を共有しているという事実が効いてくることもあるのでそういう場合はもちろん大好きですね。